暫くの間、
練習で手を使えなかったので、
その間やってみたことの一つ。
バッハの平均律全48曲を、
何度も何度も繰り返し聴く。
聞くともなしに漠然と聞いたり、
耳を欹てて集中して聴いたり…。
そのうちに、殊更興味がわいた部分を、
楽譜を見ながら聴いてみたり…。
そんなことを、
1~2ヶ月も繰り返している内に、
ものすごい発見があったりする…。
平均律も、
作曲年代に20年の隔たりがある、
第1巻と第2巻では、
性格に違いがあり大変興味深い。
そして、円熟期にあたる、
第2巻の幾つかの作品に聴いて取れる、
ある種時代錯誤的な、
重厚でシンフォニックな響きには、
正直圧倒されて、言葉を失う…。
天才はしばしば時代を先取りする。
完全な音楽的記譜法と言われる、
バッハの作品に於いてでさえ…、
と語られるそれらの曲を聴いていると、
この怪物が、
来るべき古典の時代を通り越し、
ピアノという楽器が今日の原型となり、
鍵盤楽器の最盛期と呼ばれる、
ロマン派時代を、
既に予感していたのではないかと、
そう思えてならない。
改めて、
音楽の父と称される大バッハと、
そして、その作品から、
真価を紡ぎだす大ピアニストに、
脱帽…。